毎年、業種や規模の異なる様々な企業に訪問し、新入社員研修を実施しています。
その半年後、新入社員たちに再会し、フォローアップの研修を実施します。
若手社員のうちは、能力やスキルにそれほど差がつかないと言われますが、本当にそうなのだろうかと、ここ数年、違和感を持っています。
半年後の新入社員たちと接していると、入社時には見られなかった差を感じます。
その差とは、次の3つです。
1.熟考の差
一つのことについて長く考え続けられない人がいます。これは日頃の仕事の習慣に起因しています。
職場で考えながら仕事をしている人は、研修においても一つのテーマについて考えることがそれほど苦になりません。
しかし、日頃そのような仕事の進め方をしていない人、指示されたことをその通りに取り組んでいることが多い人は、研修で考える時間を与えられても、5分もしないうちに集中力が切れてしまうのです。
人間は習慣の生き物ですから、普段やっていないことは研修でもできるはずがありません。
2.目的意識の差
研修を通じて接する新入社員の多くは、「もっと成長したい」という意欲を持っています。
しかし、成長欲求を持っていても、
・成長した結果としてどうなりたいのか
・目指す姿に近づくために、いま何が必要であるか
・そのためにどのような行動を取ればいいか
これらを整理できていない人は、目の前の仕事が自らの成長にどう関わるのか、
あるいは、参加する研修がどういう意味を持つのか深く理解していません。
結果として、とにかく成長したいという漠然とした欲求だけで終わっています。
3.経験からの学びの差
研修参加者に半年間を振り返るという作業をしていただくと、自らの経験から気づいたこと、学んだことの内容や量に大きな差が出ます。
同じような経験をしていても、それを抽象化する力の差によって、教訓化できる人と、ただの経験で終わる人に分かれます。
また、1のように集中力が乏しいなど、そもそも考える時間が短ければ、経験から気づきを得ることも難しくなります。
研修の場で接する新入社員と、職場での彼らの姿は全て同じではないかもしれません。
しかし、上記のような遅れをとってしまった新入社員たちも、半年前は、学ぶ意欲が高く、素直さを持って取り組んでいたのです。
一方で、半年前以上に自信をつけ、日々より多くのことを吸収している新入社員もいるわけです。
人は環境に影響を受ける生き物ですから、良くも悪くも職場や会社に染まります。
新入社員は気づかないうちに、考え方や仕事への姿勢に職場の影響を受けます。
上記のような3つの差を知った企業のうち、対策を打つ企業は残念ながらほとんどありません。
そのため、差はますます広がっていきます。今は大きな差ではないため、職場では見えにくいかもしれません。
職場の上司が、自社の入社社員と他社の新入社員とを比較することも難しいでしょう。
だからこそ、人事部の存在が必要で、新入社員の半年間の変化を把握して、必要に応じて対策を打てばいいのです。
これは、新入社員に対するフォローアップ研修の目的でもあるのです。
フォローアップの研修を実施して終わりではありません。
昔ながらの長いスパンで育成できるほど余裕のある企業は稀です。
新入社員なのだから、「ゆっくりでも少しずつ育ってくれればいい」と考える企業は別ですが、多くの企業は悠長なことは言っていられないでしょう。
今後の新人教育のあり方について、議論する余地があると考えます。