ある理念浸透調査によると、自社の業績に貢献していると考える社員には下記のような特徴が見られたそうです。
・理念を社外に説明できている。
・理念に沿った行動を多くとっている。
・仕事へのモチベーションが高い。
・自律的である。
同調査から、私は次のような仮説を立てました。
「理念浸透を加速させるためには、自社の業績に貢献していると考える社員をキーパーソンとして、
浸透施策を実施することが効果的ではないか。」
この仮説を具現化するなら、例えば、上位の役職者を対象に理念浸透に関する研修を実施するより、
理念浸透を推進するメンバーを社内公募して、研修を実施した方が効果的ということです。
公募制によって集まった社員は、応募しなかった社員より主体的で、理念浸透に関心があり、
仕事へのモチベーションも高いと予想できます。
そのため、彼らは自社の業績に貢献していると考える社員の可能性が高いでしょう。
従って、彼らに理念浸透教育を施せば、積極的に社内外に説明しようと試み、
理念に沿った行動もより多く取ろうとするのではないでしょうか。
もちろん、社内公募をすれば各部署からバランス良くメンバーが集まることや、
多様な役職者が集まるようなことは難しいでしょう。
しかし、バランスや公平感を気にし過ぎると、表向きは協力的に見えても、
本当は意欲的ではない理念浸透推進メンバーが関わる恐れがあります。
そのようなメンバーがいる中で、「さあ、まずは我々から理念を体現していこう」と叫んだところで、
足並みが揃わないことは自明です。
テレンス・ディール氏、アラン・ケネディー氏は、名著「シンボリック・マネジャー」
の中で
「マネジャーは、理念の体現者たれ」と述べています。
理念浸透の取り組みでは、多くの場合、まずマネジャークラスへの理念浸透教育が施されます。
しかし、理念の体現者にはなりきれないマネジャーや体現する気もないマネジャーが存在する多くの組織において、
このような取り組みは一筋縄にはいきません。
また、一人ひとりがリーダーシップを発揮することが求められる現代において、誰もが理念の体現者になって
仕事に取り組むことが必要ではないでしょうか。
そう考えると、まずは社内公募によって意欲的なメンバーたちと
理念浸透の取り組みをスタートさせることは、検討に値するでしょう。
もっとも、自社の業績に貢献していると思えないようなマネジャーは、その職を辞するべきでありますが・・・