先日、名優ジャック・ニコルソン主演の「アバウト・シュミット」を観ました。
定年退職によって、自らの存在意義を見失い苦悩するところに、妻との死別や結婚による子供の独立など、
社会的な帰属や家庭への帰属を突如失います。
定年退職を迎えた多くのサラリーマンが遭遇する悲哀をジャック・ニコルソンが存在感たっぷりで コミカルに演じていました。
人生の終末を意識し始めると、アイデンティについて考え直す人は多いようです。
エリクソンは、「幼児期と社会」の中で、人間の精神的発達を8段階に分けて考察していますが、ジャック・ニコルソンが置かれた状況は、その7段階目にあたる状態に見えました。
彼は、定年退職後に自らのアイデンティティに悩み、恵まれない地域の子供に対して金銭的援助を始めます。
映画では、会ったこともないその子供への手紙を書き綴っていくことを通して、 彼のアイデンティに関する苦悩を描いています。 エリクソンは、この7段階目をGenerativity(ジェネラティビティ)と名づけています。
これは、Generate(生み出す)という言葉からの造語で、人間が初めて自分だけへの関心から次世代への関与に移り変わる段階を指しています。
つまり、自分のために行っていたことから、後進のために何を提供できるかを考え、実践していくことを通じて、社会に貢献する段階です。 ある一定の年代に差し掛かると、自分が培った経験やスキルを後進に伝えたいと思うようになることは、多くの方が共感されるところではないでしょうか。
実際、私が知る40代以上の方々も、程度の差はあれ、自らの経験を基に後進に何か価値あるものを残したいと話しておられます。 ただし、その何かがまだ分からないというのが現状のようです。
多くの企業において、打ち止めとなった40代以上の従業員をどのように活性化させるかは、大きな課題であります。
ジェネラティビティという概念を考慮すれば、なれる可能性の低い上のポストを目指すのではなく、後進に価値ある何かを残すというように、仕事に取り組む目的や意義を変えさせることが、活性化のキーではないでしょうか。