人事の世界にも毎年流行がありますが、やや残念なことにたいてい輸入物です。
今年一年を振り返ってみても、様々な輸入物がありました。
人事の方々への浸透の程度は、分かりませんが、 ワールド・カフェもその一つではないでしょうか?
「対話」をキーワードに、これまでの日本的会議のあり方とは 大きく異なる手法が、多くの方々にとって、好意的に受け入れられたようです。 私自身も、様々なシーンでワールド・カフェに参加する側(ゲスト)を経験し、 また、主催する側(ホスト)としても経験してきました。
「創造的なアイデアの創出」や「知の共有」、「安心感のある場」といった コンセプトは、
閉塞感のある職場や、現状を打破したいと考える個人にとっては、 魅力的に映ったのではないかと思います。
文化や価値観の多様性が日本以上に大きい欧米では、反論があって当然の 議論文化であるため、
議論からは生まれにくい「対話手法」のインパクトは、 大きかったのではないでしょうか。
一方、日本の議論文化では、反論=人格否定と取られかねない場合があるため、
会議の参加者同士が、空気を読みあうこともしばしばあります。
このような背景もあって、会議で結論を出すことが苦手な職場は 多いのではないでしょうか?
そういった意味で、ワールド・カフェはそもそも結論を出すことが 目的ではありませんので、
参加者にとっては、空気を読みながら、結論を 出さなければならないというストレスから
開放されているという前提があります。
このあたりも、参加者の多くがワールド・カフェを好意的に 評価する所以ではないかと考えられます。
ワールド・カフェは、正しく活用すれば、参加者同士が良好な関係を 築くことができる側面もあるため、
職場だけでなく、地域社会や コミュニティなどあらゆるシーンで実践する価値があります。
一方で、ワールド・カフェもどきのようなものも結構あります。
手法自体は、決して難しいものではないため、誰もが気軽に取り組めます。
しかし、その点が災いして、主催者(ホスト)が、準備を怠ることや、 参加者(ゲスト)への
不十分な説明がなされることも体験しました。 また、主催者(ホスト)のコントロールの問題ですが、
下記のような事象も見られました。
・ テーマとあまりにかけ離れた雑談によって、対話の意義が低下する
・ 一人の参加者(ゲスト)の悩み相談の場となる
・ 参加者(ゲスト)の発言量に偏りが生ずる
・ 主催者(ホスト)が参加者(ゲスト)の発言を誘導している
このように、主催者(ホスト)次第で、ワールド・カフェ本来の良さが損なわれ、
参加者(ゲスト)に良いイメージを与えない場合もありますが、これにはもう少し経験という時間が
必要なのかもしれません。 とはいえ、結論が決まっていないことや、正解のない問題、ビジョンなど
未来を建設的に考える際には、大変適した手法ですので、 是非多くの方に体験していただき、
様々なシーンでご活用いただきたいと思います。 ご興味のある方には、下記2冊がお勧めです。